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第1回ゲスト 日本舞踊家 花柳輔蔵氏
第1回ゲスト 日本舞踊家 花柳輔蔵氏



日舞は最も新しい伝統文化なんです

谷  : 今年のお正月に「新春舞踊会」で輔蔵さんの踊りを拝見したんですけど、
          とても力強くて貫禄のある踊りでした。
輔蔵: ありがとうございます。
谷  : 輔蔵さんが「日本舞踊家」になるまでのお話しを聞かせてもらえますか。
輔蔵: はい。小さい頃から人前で何かをして笑ってもらうことがとにかく好きで、 小学校から演劇部に入って、中学の時には本格的に演劇学校に通い始めたんです。 日舞はずっと続けていたんですけど、大学3年の就職活動の時に演劇か日本舞踊か という選択になって、日本舞踊家の道を選びました。
eikowalk 通信谷  : 日本舞踊への気持ちが強かったんですね。
輔蔵: せっかくこの家に生まれたのだからという気持ちは大きかったですね。 周りに役者はたくさんいるけど日本舞踊家は少ないし、その血筋じゃないと できないことってたくさんあるなと。同じ舞台に立つならば、僕が貢献し得る 度合いが高いんじゃないかと思ったんです。
谷  : なるほど。お爺様は美空ひばりさんの振付もしていらしたんですよね。
輔蔵: はい。歌謡界に飛びだしていったのは祖父が初めてじゃないかな。
谷  : 日本舞踊家って振付家でもあるんですね。
輔蔵: そもそも、日本舞踊家って歌舞伎役者の振付をしていたんです。 それが歌舞伎を見るようになった庶民が、自分も真似して踊ってみたい ということで直接振付師に習うようになって、そこから今度は発表会みたい なことをしたいというようになって、それだったら先生も踊ってくださいよ、 という流れで、人前で踊るようになったのが日本舞踊家の始まりなんです。
谷  : それって、いつ頃のことですか。
輔蔵: 江戸後期です。それから昭和になって西洋のバレエや多民族の踊りが入って くるようになって、それならば日本舞踊という踊りが独立してあっても いいじゃないかということで、「日舞」という舞踊のジャンルが誕生したんです。
谷  : 「出雲の阿国の時代」からだと思っていましたけど、日舞の伝統芸能としては ごく最近のことなんですね。
輔蔵: そう。一番新しい「伝統文化」なんです。


美しい動きには全てに軸がある

谷  : ところで、日舞には独特の体の動きがありますよね。 身につけていくのにどのようなお稽古をするんですか。
輔蔵: 日舞には特に基礎的な稽古というのはなくて、 演目の踊りを一から練習することによって体の動きを覚えていくんです。
eikowalk 通信谷  : バレエのように、基本の型を練習するバーレッスンのようなものが あるんだと思っていました。
輔蔵: 僕らの場合、芝居からの流れなので動きの練習として考えてしまうと、 人間らしさとしてのなめらかさがなくなってしまうんです。
谷  : 芝居としての動きという考えなんですね。
輔蔵: そう。なので先生の動きをとにかく真似して真似して身につけていきます。
谷  : 私の場合「日常の歩き方」を指導しているので、理想の歩き方を体系づけて 練習するようにしています。
輔蔵: 日舞でも基礎的な動きの要素として、「首のふり」や「歩き方」などは そういう練習をすることはありますね。
谷  : その「歩き方」を教えてもらってもいいですか。
輔蔵: はい。日舞の歩き方の基本は「重心移動」です。
谷  : ウォーキングと同じですね。
輔蔵: 基本的に股関節を曲げて重心を下げた姿勢を保ちながら、 帯の位置が変わらないように意識して歩くイメージなんです。
谷  : 「下に下に」意識するんですね。
輔蔵: そう。例えば廻るときでも僕はよく野菜の遠心分離機を例えるんだけど、あれって 押さえるとグンとまわりますよね? 廻るときは下にぐっと押しつけながらまわる ことを意識するんです。バレエだと軸を「上に上に」意識してってまわるでしょ?
谷  : はい。
輔蔵: 日舞の場合、洋舞と意識するイメージが逆なんです。
谷  : ウォーキングは洋式の歩き方なので、常に「重心を高く引き上げて」って教えています。
輔蔵: そこが一番の違いじゃないですかね。
谷  : でも、腰を支点にして軸を通して歩くという部分は一致していますね。
輔蔵: そう。日舞の歩き方は腰を入れたまま「ブレない」ことを美としています。

谷  : 美しい動きってやっぱり全てに「軸」があるんですね。


少しの動作で印象が変わる

谷  : それと日本舞踊には「女形」と「男形」の踊りがありますよね。
輔蔵: はい。歌舞伎はどちらか一方を演じますが、日舞の場合は両方を踊るのが普通です。
谷  : 両方を踊るうえで、それぞれに意識することってなんですか。
輔蔵: たとえば、男形は膝を外に向けて、女型は膝を内に入れて一本の線を辿っていく ことを意識するとか・・・。
谷  : 男性と女性の違いを表現するわけですね。
輔蔵: そうです。
谷  : これって、「女性らしさ」や「男性らしさ」のお手本にもなりますよね。
輔蔵: そう。街中でも、もうあと少し「股を閉じればいいのに」っていう女性を 見かけたりしますよね。
谷  : いますよね(笑)。
輔蔵: たとえば、咳をするときにでもちょっと「口に手を添えて顔を横に向けてする」とか、 そういうしなやかな動きが女性らしさの印象に繋がるんじゃないですかね。

谷  : なるほど。日常の動作も少しの意識で印象がグッと変わるということですね。


"やってみる"ことが自分を高めるきっかけになる

谷  : では、最後に「eikowalk通信」を見てくださっている方にメッセージを頂けますか。
輔蔵: 僕も日本舞踊という世界で、師匠や先輩方から所作や心得をひとつずつ学んだんですね。 なので、まずは姿勢や歩き方でも、日舞でも、興味があることを「やってみる」という ことが大切だと思います。 それをきっかけにいろいろな「気づき」が自分を高めて くれると思うんです。もう既にこのホームページをご覧になっている人達はそういう 「意識」を持っているというだけで素晴らしいと思うんですよ。ですから、まずは 「やってみること」をおすすめします!
谷  : 今日はありがとうございました。
輔蔵: こちらこそ、ありがとうございました。


■ 対 談 後 記
昨年、『もうひとつの龍馬伝』という舞台を観劇させていただき、 輔蔵さんの役がすごくおもしろくて最後まで笑いっぱなしでした。 その中で彼がジャズに合わせて日舞を踊っていたのですが、それが すごく新鮮で舞台の輔蔵さんを見て、『チャップリン』を感じました。 現在、舞踊家、役者、振付などマルチな才能を発揮されている輔蔵さん ですが、古典ものからコメディまでこなすエンターテイナーとして 益々の活躍が楽しみです。


花柳輔蔵さんの公式および関連サイト、今後の活動のご紹介です。
「facebookファンページ」: https://ja-jp.facebook.com/TheStylez2007
「ツイッター」: https://twitter.com/#!/yusukezou777

* 公演については、順次ホームページに掲載いたします。
「The Stylezすたいるず 公式サイト」: TheStylez.com
メール・お問い合わせ先: yusukezou777@thestylez.com

☆活動情報
5/1(日) 木の花会 国立大劇場『長唄 勝三郎船弁慶 四天王』
5/5(木) 花柳照之日夏の会 日本橋公会堂 『長唄 助六』
9/24(土)東京新聞推薦名流舞踊会 国立大劇場 『清元 三社祭』
11月 坂東玉三郎舞踊公演